ケニアでエムペサ(M-PESA)が普及し、日本でモバイル決済が普及しないわけ

フィンテックのターニングポイント

フィンテック(Fintech)でビジネスのターニングポイントとなる事項として代表的なものに下記の3つが挙げられます。

Fintechで新しい市場ができるとき

①法律が変わった時
②新しいプラットフォームができたとき
③新しい技術ができたとき

この中で今日は「②新しいプラットフォームができたとき」についてまとめたいと思います。

 

ちなみに「①法律が変わった時」については、別の記事でまとめていますので合わせて参考にしてください。

↓↓法律の緩和により金融サービスでフィンテックベンチャーの参入が可能となりました↓↓

フィンテックの流れはアンバンドルからリバンドルへ

 

成人の80%以上が使うケニアのモバイル決済「M-PESA(エムペサ)」

新しいプラットフォームとは、近年でいうと携帯電話やスマートフォンの普及が挙げられます。

ケニアでGDPの約50%の取引を占める金融サービス「M−PESA(エムペサ)」をご存知でしょうか。

エムペサはモバイル決済サービスで送金・決済などが行える、日本でいうところのLINE Payや楽天ペイのようなサービスです。

ケニアの携帯電話会社サファリコムに出資した英携帯電話大手のボーダフォンが2007年に開始したエムペサは、いまやケニアの成人の約80%の人が利用している金融インフラサービスです。

途上国ではまだ20億人の人が銀行口座を持てないと言われており、アフリカで銀行口座を持つ人の割合は、人口の10%以下です。

一方でスマートフォンの保有割合は60%もの人がいます。

※正確にいうと、ケニアでは18歳以上になるとSIMカードが作れるようになり、10人くらいのグループで1台の携帯電話(ほとんどは安価のファーウェイ)を共有して使っているようです。

 

スマートフォンの普及でモバイル決済が全世界で可能に

モバイル決済は日本ではまだ一般的に使われていないですが、ケニアではエムペサが広く普及され一般的に使われています。

中国ではWeChatPayやアリペイのモバイル決済サービスが普及しています。

北京に行った際は、老人が飲食店でスマホを使いWeChatで支払いをしており、日本より進んでいるなという印象を受けました。

ではなぜケニアのような途上国は日本よりモバイル決済が普及しているのでしょうか。

それはプラットフォームが大きく影響しているからだと考えられます。

日本ではもともとPCが一般に普及しました。iPhoneなどのスマートフォンが普及して徐々に変わってきていますが、まだ仕事ではPCを使う人が多いです。

一方で途上国のケニアではPCのような高価物は普及しておらず、インターネットアクセスの99%はモバイルからと言われています。

PCとモバイルというプラットフォームの普及割合が日本とケニアではかなり違うわけです。

そういった点で、ケニアでのモバイル決済サービスは日本より普及が進んだと考えることができます。

 

日本はATMが便利すぎてモバイル決済が普及しない?

その他にも、日本では銀行の支店やATMの普及率も影響していると考えることができます。

日本のほとんどの街には、メガバンクや地銀の支店やATM、最近ではコンビニATMが設置されており、そこで銀行サービスを利用することができます。

前述した通りアフリカではほとんどの人が銀行口座をもっていないので、そういった金融インフラの違いも影響しています。

少し前までは、先進国の日本で成功したビジネスモデルを海外で売るタイムマシン経営がたくさんありましたが、いまやケニアや中国を始め、多くの国が日本よりFintechを含むIT化が進んでいるので、逆に日本が見習って輸入する時代となりました。

こうした途上国が先進国を上回る現象は「リープフロッグ(蛙跳び)」と呼ばれています。

従来の発展形態をそのままなぞるのではなく、技術進歩があると、それまでの段階を飛び越えて新しい先端のサービスにいってしまうのです。

日本でもこれからスマホやタブレットがもっと普及していくでしょう。

新しいプラットフォームへ変わっていく時に、Fintechでは新しい市場が生まれます。

 

欧米を発端にした止められないモバイル決済への流れ

先進国でも欧米を発端にモバイル決済の普及が急速に拡大しています。

モバイル決済の拡大に半比例して、既存の支店数や従業員数の現象も始まっています。

バンク・オブ・アメリカの場合、2010年に米国国内の支店数は6052店舗ありましたが、2015年には4787店舗と、実に21%にあたる1265店舗が姿を消しています。

日本でも、みずほフィナンシャルグループは今後10年間で1万9,000人の人員を削減し、現状の約6万人から4万人規模に移行する検討をしています。

海外では既にこのような縮退営業の潮流にあり、日本のメガバンクをはじめとする既存金融機関も逃れようのない事象となっている表れです。

みずほフィナンシャルグループが1.9万人削減検討

 

フィンテックを学ぶためのオススメ書籍

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↓↓別の記事でレビューも書いていますので合わせてご参考にしてください↓↓

【書評】FinTechの衝撃(城田 真琴著)から読み解くフィンテックの潮流

(この記事は2017年9月26日に執筆したものです)

 

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