ガートナー社のハイプサイクルとは?正しい見方と幻滅期でよくある間違い

こんにちは、モリタです。

本日はガートナー 社のハイプサイクルの見方についてご説明します。

ハイプサイクルとは、特定の技術の成熟度、採用度、社会への適用度を示す図でガートナー社がこの概念を造り出しました。

どちらもビITのジネスシーンで市場動向の調査や導入時の製品選定などに利用されていますが、ITの分野で働いている人は一度はみたことがあるのではないでしょうか。

今日はこのハイプ・サイクルの見方と、幻滅期と言われる谷のフェーズでよくみられる間違った捉え方についてまとめてみたいと思います。

 

IT業界最大規模シンクタンクのガートナー

Gartner(以下、ガートナー)社は米国に本拠地を置くIT分野の調査やコンサルを行う業界最大規模の企業で、世界中の名だたる大企業や政府機関を顧客に持つ歴史のある会社です。

IT分野の調査やコンサル以外にも、テクノロジー関連企業の最高情報責任者(CIO)など向けの会員制サービスである「エグゼクティブプログラム」、グローバルで実施される「Gartner Symposium/ITxpo」というイベントの主催、出版、マーケティングなどを行っています。

ガートナーは日本法人のガートナージャパンも持っており、今回見るハイプ・サイクルも日本の市場やユーザアンケートによってきちんと日本向けに提供してくれています

基本的に調査情報は有料会員にならないと見れないのですが、注目分野の情報に関してはプレス・リリースとして無償で提供されるものもありますので、定期的にチェックしておきましょう。

 

マジック・クアドラントとは

ガートナーといえばマジック・クアドラントが有名で、よくメーカーや大手ベンダーが自社が市場のリーダポジションにいることをアピールするために使います。
右上に行くほどリーダーポジションにあるのですが、業界の力関係が一目でわかる有名な指標です。

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Gartner Magic Quadrant

 

マジック・クアドラントについては別記事で詳しくまとめましたので併せて参考にしてください。

↓↓マジック・クアドラントについて詳しく知る↓↓

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ハイプ・サイクルとは

マジック・クアドラントがメーカーやベンダーカットで市場を見ているのに対して、ハイプ・サイクルはテクノロジーカットで市場をみているものです。

ハイプ・サイクルとは、特定の技術の成熟度、採用度、社会への適用度を示す図で、ガートナー社がこの概念を造り出しました。

どちらもビITのジネスシーンで市場動向の調査や導入時の製品選定などに利用するのですが、ハイレベルな投資家ならこのあたりの情報までチェックして期待できる技術やそれを提供する企業を見極めたいものです。

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Hype Cycle(Gartner)

 

マジック・クアドラントとハイプ・サイクルの見方例

実際私が投資をしているSplunkという企業は、SEIM(Security Information and Event Management)という、セキュリティ技術に関する部門で、IBMと並んでリーダーの位置を獲得しています。

【関連記事】
【海外企業分析】スプランク Splunk inc. (NASDAQ:SPLK)

SEIMの部門でどのメーカーやベンダーがリーダーを取っているか(取りそうか)、どのような競合他社があるかというのはマジック・クアドラントでみることができます。

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SEIMのMagic Quadrant

 

じゃあ、そのSEIMという技術は、今の市場でどのような位置にあるのか、今後どのように発展していくのか、ということがハイプ・サイクルで見ることができます。

ガートナーはハイプ・サイクルをテクノロジー分野別に160種類以上、定期的にまとめているそうです。

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日本におけるテクノロジのハイプ・サイクル:2018年

 

ハイプサイクル 各フェーズの見方

では早速ハイプ・サイクルの見方を確認していきましょう。まず、ハイプ・サイクルは下記図のグラフに技術動向がプロットされます。このグラフは常に同じ曲線を描いています。

グラフの縦軸は市場における当該技術の期待度横軸は時間を表しています。

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Hype Cycle for User

1.黎明期(イノベーショントリガー:Innovation Trigger)

シーズから技術が生まれ、特定の数社に採用され始めます。

この技術の採用社数が増えると期待が向上するので、ハイプ・サイクルの坂を登っていきます。

この期間はだいたい5年以内ですが、5−10年とされることもあります。

新製品発表やその他のイベントが報道され、世間の関心が高まリ始める時期です。

 

2.流行期(膨らんだ期待のピーク:Peak of Inflated Expectations)

先行者やメディアに頻繁に取り上げられる時期です。

時には夢のような事例が語られ、なんでも解決できるという誤解を生む時期ともいえます。

キャッチアップの早い企業が導入を始めますが、現実と夢のギャップから失敗に終わることも多々あります。

日本の場合はユーザ企業がSIerに丸投げすることが多いので、構築時のトラブルでSIerが泣くことがよくあるフェーズともいえます。

 

3.幻滅期(幻滅の谷:Trough of Disillusionment)

過度な期待を元に、提案要求し、一部採用されるが、モノが小慣れていなかったり、失敗したりで、そんな夢のようなIT技術は存在しないんだと現実に気づく時期です。

メディアはその話題や技術を取り上げなくなっていきます。

名称は幻滅ですが、技術に幻滅したわけではなく、出来ること出来ないことが整理され、正しい使い方が理解される時期です。

 

4.回復期(啓蒙の勾配:Slope of Enlightenment)

メディアでその技術が取り上げられなくなった一方、いくつかの事業は「啓蒙の坂」を登りながら継続し、その利点と適用方法を理解するようになります。

出来ることが理解された上で製品が採用され、ユースケースにより技術が啓蒙されていきます。

 

5.安定期(生産性の高まり:Plateau of Productivity)

技術が徐々に安定し、第二世代、第三世代へと進化するとともに、関連する新たな問題が提起されます。

新たな問題の改善技術が検討され、その技術が再び「1.黎明期」に戻ることもあります。

この技術の市場規模は、広範に適用可能か、あるいはニッチ市場のみかによって様々です。

 

ハイプサイクルでよくある間違った見方

「流行期はもっともいい状態」「幻滅期は悪い状態」ではない

ハイプ・サイクルの曲線は技術が創生される黎明期から始まり、もっとも注目を集める流行期(ピーク期)を迎え、その後幻滅期と言われる谷へと向かっていきます。

この「流行期をいい状態」、「幻滅期を悪い状態」と勘違いしている人が多いのですが、これは明らかな間違いです。

ガートナーのリサーチチームのバイスプレジデント兼ガートナフェーローのJames(Jamie) M.Popkin(ジェイミー・ポプキン)氏が過去のガートナーシンポジウムで語った記事がZDnetさんにあるので合わせて参考にして欲しいのですが、

幻滅期こそハイプ・サイクルで一番注目すべきフェーズであり、確固たる市場形成への登竜門といえるフェーズなのです。

 

幻滅期は定番技術への登竜門

幻滅期は、先行者の失敗事例が明確になり、技術の現実に気づき始める時期です。

技術の現実的な部分に目が向けられ始め、需要側と供給側が歩み寄る現象がおきます。

すなわち幻滅期の谷の部分でテクノロジによってできることとできないことが見極められて、その後定番技術へと発展していきます。

幻滅期の幻滅という言葉は、技術に幻滅したのではなく、できることできないことが見極められて、確固たる市場を形成し長期に渡って使われ続ける技術になることを表します。

 

実際によくある間違い – ブロックチェーンやAIの例

2018年10月にガートナーから日本におけるテクノロジのハイプ・サイクル2018が発表されました。

このハイプ・サイクルが示す曲線において、ブロックチェーンや人工知能(AI)が流行期と言われる曲線のピークを超え、幻滅期と言われる谷のフェーズへと入りました。

実際この幻滅期に入ったことにより、テクノロジが衰退していくのではないかという懸念の声が非常に多く見られました。ここまで読んでいただいた方なら理解いただける通り、これは間違った見方です。

もう少し詳しくブロックチェーンとAIの捉え方について別の記事でまとめていますので合わせてご参考にしてください。

関連記事:ブロックチェーンやAIは衰退するのか?ハイプ・サイクルから考察する

ハイプサイクルを具体例で説明

ハイプ・サイクルの各フェーズの説明をしましたが、イメージがつきにくいと思いますので、別記事でブロックチェーンと人工知能(AI)を例に説明しました。

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また、AIが幻滅期へ突入したことにより、先日ガートナー から今後のAI技術の推進について提言がありました。要約すると「企業はベンダーに技術を丸投げするな!」という指摘です。

流行期の説明で取り上げた通り、日本はよく技術を理解しないままベンダーに丸投げする企業が多いのが実情です。

幻滅期では出来ることと出来ないことを見極める必要がある段階なので、今後の成長のためにもガートナー 社がIT業界全体に対して提言している形となっています。

こちらのプレスリリースについても取り上げて要点をまとめましたので合わせてご参考ください。

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